健康寿命の都道府県ランキング~上位・下位の要因は?女性特有の要因も
2017/03/10
『平均寿命よりも「健康寿命」が大事です!』と、いろいろなところで言われるようになりました。
これについては、都道府県別の数値やランキングまで発表されていて、気になりますよね。
都道府県の健康寿命ランキングについて、過去のデータをもとに比較・検証してみました。
健康寿命の都道府県ランキングはどうなっているの?
健康寿命とは?
まず、健康寿命と何かを確認しておきましょう。
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことを言いいます。
平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約12年の差があります。
逆の見方をすれば、この期間は何かしら健康上の問題がある期間ということになりますよね。
つまり、健康寿命の期間をできるだけ延ばしていくことが、負担のない余生を送れることになるのです。
詳しくは、
「平均寿命とは?そして平均余命とは?健康寿命についても解説します」
をご覧くださいね。
都道府県別データは?
厚生労働省から、2001年(平成13年)から3年ごとに、2004年(平成16年)、2007年(平成19年)、2010年(平成22年)、2013年(平成25年)におけるデータが発表されています。
2001年(平成13年)~2010年(平成22年)のデータは、
内閣府「見える化ポータルサイト」
※分野:暮らし>中分類:健康>「見える化」項目:健康長寿(男・女)」で選択してください。
2013年(平成25年)のデータは、
厚生労働省「健康寿命の都道府県格差の縮小について」(PDF)
で参照できます。
これらをまとめると次のとおりになります。
(※各調査年の数値を加えて調査回数(5回)で割ったものです。)
健康寿命の都道府県ランキング トップ10(男女別)
順位 | 男性 | 女性 | ||
都道府県 | 健康寿命 | 都道府県 | 健康寿命 | |
1 | 静岡県 | 71.19 | 茨城県 | 74.80 |
2 | 愛知県 | 71.14 | 静岡県 | 74.72 |
3 | 千葉県 | 70.98 | 山梨県 | 74.60 |
4 | 沖縄県 | 70.97 | 沖縄県 | 74.59 |
5 | 群馬県 | 70.89 | 宮崎県 | 74.47 |
6 | 茨城県 | 70.87 | 栃木県 | 74.34 |
7 | 山梨県 | 70.84 | 群馬県 | 74.29 |
8 | 長野県 | 70.80 | 石川県 | 74.16 |
9 | 神奈川県 | 70.79 | 福井県 | 74.12 |
10 | 福井県 | 70.65 | 千葉県 | 73.94 |
健康寿命の都道府県ランキング ワースト10(男女別)
順位 | 男性 | 女性 | ||
都道府県 | 健康寿命 | 都道府県 | 健康寿命 | |
38 | 愛媛県 | 69.48 | 滋賀県 | 72.98 |
39 | 兵庫県 | 69.46 | 福岡県 | 72.90 |
40 | 佐賀県 | 69.45 | 京都府 | 72.839 |
41 | 岩手県 | 69.41 | 高知県 | 72.836 |
42 | 島根県 | 69.39 | 香川県 | 72.68 |
43 | 長崎県 | 69.26 | 広島県 | 72.59 |
44 | 大阪府 | 69.13 | 徳島県 | 72.51 |
45 | 青森県 | 69.05 | 東京都 | 72.45 |
46 | 徳島県 | 68.92 | 大阪府 | 72.37 |
47 | 高知県 | 68.56 | 兵庫県 | 72.35 |
健康寿命の都道府県ランキング 上位の要因は?
これを見ると、例えば男性と女性が共通してトップ10入りしている都道府県は、茨城県、静岡県、愛知県の3県です。
この3県の共通点は、う~ん、のんびりしてそうなイメージもありますが、特に共通する部分は思いあたりません。
ココで、興味深い学説を見つけました!
近畿大学の岩前篤教授が、冬の寒さと健康との関係について次のように述べられています。
- 健康寿命を延ばすために気をつけなければならないポイントは「冬の寒さ」
- 現代社会における健康は「冬をいかに暖かく過ごすか」にかかっている
- 冷気を吸い込み肺が冷えることによる免疫力低下を防ぐ対策は居住空間の温度を上げる
- 暖房の効いた部屋と冷えたままの風呂場などとの温度差は15℃以上にもなり、心臓発作や脳卒中を引き起こす「ヒートショック」の危険にさらされる
- 冬場に一定以上の室温を保つ高断熱住宅は健康に良い影響を与える
- 調査によると、高断熱高気密住宅では、せきやのどの痛み、手足の冷えなどに加え、アトピー性皮膚炎なども減少するが、これは住まいが暖かくなることで着衣量が減り、アトピーの引き金となる衣類からの刺激を小さくすることができるからではないかと考えられる
で、ここから先は岩前教授の研究結果からのワタシの推測ですが、
つまり、
と推測できます。
そう仮定すると、高断熱高気密住宅に居住しているかどうかをどうやって調べたらよいかが問題になります。
そこで、マンションでも戸建でも、新築なら、程度の差こそあれ、高断熱高気密住宅である可能性が高いと仮定して、政府統計の「住宅着工統計」から関連付けてみました。
データは都道府県ごとの住宅着工戸数(H25)を世帯数(H27)で割り、率を出したもので、必ずしも正確とは言えない部分もあるのは承知していますが、全体的な傾向としては間違っていないと思います。
世帯数に占める着工戸数の多い都道府県のトップ10です。
順位 | 都道府県 | 住宅着工戸数/世帯数(%) |
1 | 沖縄県 | 2.97% |
2 | 宮城県 | 2.56% |
3 | 東京都 | 2.16% |
4 | 埼玉県 | 2.12% |
5 | 愛知県 | 2.11% |
6 | 茨城県 | 2.08% |
7 | 福島県 | 2.07% |
8 | 滋賀県 | 2.05% |
9 | 神奈川県 | 1.99% |
10 | 静岡県 | 1.96% |
これを先ほどの健康寿命の都道府県ランキングトップ10と比較してみます。
順位 | 男性 | 女性 | 都道府県 | 着工率 | ||
都道府県 | 健康寿命 | 都道府県 | 健康寿命 | |||
1 | 静岡県 | 71.19 | 茨城県 | 74.80 | 沖縄県 | 2.97% |
2 | 愛知県 | 71.14 | 静岡県 | 74.72 | 宮城県 | 2.56% |
3 | 千葉県 | 70.98 | 山梨県 | 74.60 | 東京都 | 2.16% |
4 | 沖縄県 | 70.97 | 沖縄県 | 74.59 | 埼玉県 | 2.12% |
5 | 群馬県 | 70.89 | 宮崎県 | 74.47 | 愛知県 | 2.11% |
6 | 茨城県 | 70.87 | 栃木県 | 74.34 | 茨城県 | 2.08% |
7 | 山梨県 | 70.84 | 群馬県 | 74.29 | 福島県 | 2.07% |
8 | 長野県 | 70.80 | 石川県 | 74.16 | 滋賀県 | 2.05% |
9 | 神奈川県 | 70.79 | 福井県 | 74.12 | 神奈川県 | 1.99% |
10 | 福井県 | 70.65 | 千葉県 | 73.94 | 静岡県 | 1.96% |
着工率都道府県ランキングトップ10のうち、男性は5県が、女性は3県が健康寿命ランキングトップ10の都道府県と当てはまっています。
なお、着工率の7位は福島県、欄外の11位は岩手県ですので、この2県は震災による建築等の影響があるかも知れません。
いずれにせよ、新しい優良な住宅≒高断熱高気密住宅に住む傾向のある都道府県にお住いの方が比較的健康長寿であるということが推測されます。
ちなみに、過去5回の統計における全47都道府県の健康寿命や着工率のランキングはコチラでご紹介しています。
参考「健康寿命の都道府県ランキング 過去の全データ比較~要因の新データも」
アナタのお住いの都道府県は何位でしょうか。
健康寿命の都道府県ランキング 下位の要因は?女性特有の要因があるの?
健康寿命の都道府県ランキング 下位の要因は?
同じように、今度は、世帯数に占める着工戸数における都道府県ランキングのワースト10です。
順位 | 都道府県 | 住宅着工戸数/世帯数(%) |
38 | 愛媛県 | 1.454% |
39 | 北海道 | 1.450% |
40 | 山口県 | 1.441% |
41 | 和歌山県 | 1.438% |
42 | 島根県 | 1.29% |
43 | 青森県 | 1.26% |
44 | 長崎県 | 1.19% |
45 | 秋田県 | 1.14% |
46 | 高知県 | 1.132% |
47 | 鳥取県 | 1.130% |
これを先ほどの「健康寿命の都道府県ランキング ワースト10(男女別)」と比較してみます。
順位 | 男性 | 女性 | 都道府県 | 着工率 | ||
都道府県 | 健康寿命 | 都道府県 | 健康寿命 | |||
38 | 愛媛県 | 69.48 | 滋賀県 | 72.98 | 愛媛県 | 1.454% |
39 | 兵庫県 | 69.46 | 福岡県 | 72.90 | 北海道 | 1.450% |
40 | 佐賀県 | 69.45 | 京都府 | 72.839 | 山口県 | 1.441% |
41 | 岩手県 | 69.41 | 高知県 | 72.836 | 和歌山県 | 1.438% |
42 | 島根県 | 69.39 | 香川県 | 72.68 | 島根県 | 1.29% |
43 | 長崎県 | 69.26 | 広島県 | 72.59 | 青森県 | 1.26% |
44 | 大阪府 | 69.13 | 徳島県 | 72.51 | 長崎県 | 1.19% |
45 | 徳島県 | 69.05 | 東京都 | 72.45 | 秋田県 | 1.14% |
46 | 青森県 | 68.92 | 大阪府 | 72.37 | 高知県 | 1.132% |
47 | 高知県 | 68.56 | 兵庫県 | 72.35 | 鳥取県 | 1.130% |
男性は着工率ランキングワースト10のうち5県が当てはまっており、住宅事情との関連性がみてとれます。
一方、女性は着工率ランキングワースト10のうち当てはまるのは高知県1県だけで、男性ほど関連性が顕著ではありません。
しかし、比較対象をワースト10ではなく、ワースト15に広げてみると、どうでしょうか。
順位 | 男性 | 女性 | 都道府県 | 着工率 | ||
都道府県 | 健康寿命 | 都道府県 | 健康寿命 | |||
33 | 秋田県 | 69.72 | 北海道 | 72.98 | 大分県 | 1.53% |
34 | 和歌山県 | 69.67 | 奈良県 | 72.98 | 三重道 | 1.494% |
35 | 広島県 | 69.65 | 和歌山県 | 72.98 | 山形県 | 1.489% |
36 | 鳥取県 | 69.60 | 愛媛県 | 72.98 | 徳島県 | 1.480% |
37 | 福岡県 | 69.54 | 長崎県 | 72.98 | 奈良県 | 1.46% |
38 | 愛媛県 | 69.48 | 滋賀県 | 72.98 | 愛媛県 | 1.454% |
39 | 兵庫県 | 69.46 | 福岡県 | 72.90 | 北海道 | 1.450% |
40 | 佐賀県 | 69.45 | 京都府 | 72.839 | 山口県 | 1.441% |
41 | 岩手県 | 69.41 | 高知県 | 72.836 | 和歌山県 | 1.438% |
42 | 島根県 | 69.39 | 香川県 | 72.68 | 島根県 | 1.29% |
43 | 長崎県 | 69.26 | 広島県 | 72.59 | 青森県 | 1.26% |
44 | 大阪府 | 69.13 | 徳島県 | 72.51 | 長崎県 | 1.19% |
45 | 徳島県 | 69.05 | 東京都 | 72.45 | 秋田県 | 1.14% |
46 | 青森県 | 68.92 | 大阪府 | 72.37 | 高知県 | 1.132% |
47 | 高知県 | 68.56 | 兵庫県 | 72.35 | 鳥取県 | 1.130% |
女性は範囲を広げたワースト5県がすべてが当てはまり、15都道府県中7道県が、世帯数に占める着工戸数の少ない都道府県のワースト15と重なるのです。
男性もさらに4県増えて、9県が当てはまるようになっています。
やはり健康寿命ランキングワーストの要因には、住宅着工戸数が少なく、断熱性能の低い古い家屋住宅に住み続けている~つまり、「家の中が寒い」ということに強い関係性があることが類推されるのです。
女性特有の要因があるの?
女性の健康寿命都道府県ランキングのワースト10には、東京都、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県、広島県などの、いわゆる大都市がある都道府県が多く含まれているのが特徴です。
政令市や特別区が人口の大部分を占めるこれらの都府県では、都市部の傾向が都府県全体の傾向となって表れていると考えられます。
つまり、女性の健康寿命都道府県ランキングのワーストの要因には、都市部での生活との関連性があるとも考えられます。
都市部の生活は便利である一方で、ストレスも多く、疲れやすいのも事実です。
疲労の原因には、「肉体的な疲労」や「精神的な疲労」がありますが、どちらもキチンと回復できないとストレスが溜まったり、ホルモンバランスが崩れたりして、それが長期に渡ると健康に影響を及ぼします。
一般的に、女性~特に適齢期の女性は疲れやすく、疲労と不妊は大きく関係しているとも言われています。
女性のワースト10とワースト15の比較からわかるように、女性は住宅事情よりも都市生活のストレス等から来る疲労の方がカラダにより悪い影響を与える可能性があるということが推測されるのです。
まとめ
健康寿命都道府県ランキングと高断熱高気密住宅との関係について、ワタシなりに分析してみましたが、いかがだったでしょうか。
もちろん、過去の健康寿命についての数値を単純に平均化して、高断熱高気密住宅=住宅着工戸数と仮定して、各都道府県ごとの世帯数で割るなどの曖昧さはあると思います。
ただ、近畿大学の岩前篤教授が述べられているとおり、『健康寿命を延ばすために気をつけなければならないポイントは「冬の寒さ」で、冬場に一定以上の室温を保つ高断熱住宅は健康に良い影響を与える』という点については、ワタシのような学者ではない一般人でも一定の裏付けが可能なほど確かなものなのではないでしょうか。
もちろん、各都道府県における、官民一体となった地道な取組みなどが実を結んでいるということもあるでしょう。
ワタシの住む埼玉県でも、すでに平成24年度から「健康長寿埼玉プロジェクト」を推進していて、今度は「健康マイレージ」制度を普及させるようです。
埼玉県にはぜひ、他県の模範となるような取り組みをどんどん実施してもらいたいですね!
■ おすすめトピック ■