公務員の職務専念義務免除~休暇との違いは?教員の職務専念義務免除も
「明日は子どもとひまわり城址公園に行くの!」
「いいわね、公務員はたくさん年休があって…。」
「年休じゃないのよ。市役所の福利厚生事業だから、職専免なの。」
「職専免?年休じゃないの??」
調べてみました!
公務員の職務専念義務免除とは?
職務専念義務とは?
まず、「職務専念義務」について確認しておきましょう。
公務員の職務専念義務は次のとおり法律で定められています。
国家公務員と地方公務員では法律が違いますが、趣旨はほぼ同じです。
国家公務員法
- 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(第101条第1項)
地方公務員法
- すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
(第30条) - 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(地方公務員法第35条)
職務専念義務の考え方
- 国家公務員は、「国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障すること」(国家公務員法第1条第1項)
- 地方公務員は、「地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営保障すること」(地方公務員法第1条第1項)
を実現するため、勤務時間中は職務の遂行に全力をあげて専念しなければならないことが法律で定められているのです。
つまり、無断欠勤などはもってのほかですが、勤務時間中におけるパソコンやスマホの私的利用なども職務専念義務違反になります。
これらの、職務専念義務が免除される場合を「職務専念義務免除」と言います。
公務員の間では「職専免」とか「職免」と言うのが一般的です。
上の条文をもう一度見てください。
国家公務員法には「法律又は命令の定める場合を除いて」、
地方公務員法には「法律又は条例に特別の定がある場合を除く外」
として、職務専念義務の免除についても併記されています。
公務員の職務専念義務免除は休暇とは違うの?
結論から言うと、年休や病休、育児休業なども職専免になります。
まず、職専免にはどういうものが該当するのか見ていきましょう。
職務専念義務免除の種類
職務専念義務免除は、次の2つに分けられます。
法律に基づく職務専念義務免除
- 国家公務員法及び地方公務員法に基づくもの
- 教育公務員特例法に基づくもの
- 労働基準法に基づくもの
命令又は条例に基づく職務専念義務免除
- 命令又は条例に特別の定めがある場合
- 研修を受ける場合
- 厚生に関する計画の実施に参加する場合
実際の公務の職場においては、勤務時間中の職員の行動すべてを上司がチェック・監督しているというわけではありません。
デスクワークに従事する職員を例にとると、社会通念上の常識的な範囲内であれば、勤務時間中のトイレや給水等のための離席などは、その都度上司の許可を得ることなく認められています。
従って、何が職専免に当たるか否かは、日常的な業務の中で任命権者が判断することになります。
職務専念義務免除の具体例
法律で定められている主なもの
- 休憩、休日、年次有給休暇
- 分限休職、懲戒による停職
- 在籍専従による休職(組合業務に専属で従事することによる休職)
- 職員団体から指名を受けた者が適法な交渉に参加する場合
- 自己啓発休業
- 育児休業、育児短時間勤務、部分休業
休日(国民の祝日に関する法律で規定されている日)は職専免ですが、土日は職専免ではなく「勤務が割り振られていない日」になります。
自治体の条例や規則で定められている主なもの
- 研修を受ける場合
- 厚生に関する計画の実施に参加する場合
- 職務に関連ある国家公務員又は他の地方公共団体の公務員の職を兼ね、その職に関する事務を行う場合
- 国、地方公共団体又はその他の団体等から依頼を受け、県行政の運営上特に必要と認められる講演等を行う場合
- 勤務条件に関する措置の要求若しくは不利益処分に関する不服申立てをし及びその審査に当事者として出頭を求められた場合
- 任命権者が特に必要と認めた場合
証人や参考人等として、国会や裁判所などに出頭する場合や選挙権その他公民権を行使する場合も職専免となります。
以上から、年休や病休、育児休業なども職専免になります。
つまり、「職専免」は「休暇」と同じということになりますね。
注目なのは、すでに充分な年次(有給)休暇の日数のほかに、組織の定める福利厚生事業等に参加する場合は、年次休暇を消化することなく、さらに「職専免」という勤務を要しない日が与えられる、という点です。
教員の職務専念義務免除は?
国でも地方でも、デスクワークの公務員は何となく想像ができるのですが、なかなか分かりにくいのが教員の場合です。
教員が専念しなければならない職務には、どのようなものがあるのでしょうか。
教員が専念しなければならない職務とは?
教員が専念しなければならない職務は、学校教育法に定められています。
例えば、小学校の教員の場合は、第37条第11項に、
「教諭は、児童の教育をつかさどる。」
とあります。
教員の仕事は、児童の教育以外にも学校運営に関する校務など、実に様々です。
教員の職務及び校務については、中央教育審議会の資料があります。
「職務」は、「校務」のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割である。具体的には、
- 児童生徒の教育
- 教務、生徒指導又は会計等の事務、
- 時間外勤務としての非常災害時における業務
等がある。
「校務」とは、「学校の仕事全体」を指すものであり、「学校の仕事全体」とは、学校がその目的である教育事業を遂行するため必要とされるすべての仕事であって、その具体的な範囲は、
- 教育課程に基づく学習指導などの教育活動に関する面
- 学校の施設設備、教材教具に関する面
- 文書作成処理や人事管理事務や会計事務などの学校の内部事務に関する面
- 教育委員会などの行政機関やPTA、社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面
等がある。
【参考】文部科学省>中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第8回)議事録・配付資料 [資料5]
【URL】http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/031/siryo/06111414/003.htm
つまり、公務員の中でも特に教職員の場合には、学校で行われる児童・生徒への教育活動にかかわるすべてのものが職務に当たるということになります。
これだけ見ると、ほとんどの場合に職務専念義務がありそうですね。
教員の職専免にはどんなものがあるの?
各自治体が定める条例や規則によって異なりますが、教職員の職専免には次のものがあります。
研修を受ける場合
- 大学院修士課程への派遣
- 教員免許状更新講習への参加
厚生に関する計画の実施に参加する場合
- 健康管理事業
- ライフプラン事業
- 元気回復事業
その他
- 海外研修のためのパスポート取得や更新を行う場合
まとめ
どんなことが職専免に該当するかについては、個々の法律や条例等に応じて定められています。
また、いくら法律や条例に該当していても公務が最優先ですので、職員が「これは職専免だ」と自分で判断するのではなく、任命権者(上司)が、職員の事前の申請に基づき、該当するかどうかを個別に判断しなければなりません。
その判断は、「職務の円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがないか」ということが基準になります。
つまり、職専免で「明日は子どもとひまわり城址公園に行く」ワタシの知人は、ひまわり城址公園の利用が彼女が勤める自治体の元気回復事業に位置付けられていて、かつ彼女の上司が職務の円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがないと判断したからだということになります。
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