公務員の副業はどこまでできる?アフィリエイトは?バレたらどうなる?
2018/04/03
リーマン・ショック以降、あまり景気は回復しませんが、民間の給与が上がらなければ、公務員の給与も上がりませんよね。
そんななか、比較的時間のやりくりがつく一部の公務員の方は副業を考えることもあるでしょう。
法律上、すべての副業がダメではないようです。
公務員は副業できるの?
公務員の業務は、法律や関係する規定等で定められています。
つまり、法令や通知等に定められているとおりのことしかできない、またはやってはいけないということになります。
でも一方で、公務員もひとりの社会人です。
親が不動産投資をしていてそれを相続したり、転勤している間に持ち家を貸したり、といったケースはあることだと思います。
国や自治体は、それらをいっさい禁止することはできません。
そこで、ある一定の規模までは副業とはならないとしているのです。
では、国家公務員と地方公務員に分けて見ていきましょう。
国家公務員
国家公務員は、国家公務員法とその関係省令や通達などによってその業務や身分が定められています。
国家公務員法
第103条 職員は、営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員等の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
第104条 内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可がない限り、報酬を得て兼業してはならない。
国家公務員法第103条では、営利企業の役員兼業や自営兼業の禁止を、国家公務員法第104条は、職員が報酬を得て、その他のあらゆる事業又は事務に従事する兼業(アルバイトなどを含む)の禁止を規定しています。
第103条第1項だけみると、公務員が営利企業を営むことはすべて禁止のように思えますよね。
でも、続く第2項には、
と書かれていて、例外を認めています。
人事院規則
具体的な例外は、
人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.htm
に定められています。
簡単にまとめてみました。
■ 自営に該当する基準及び承認基準 ■
一定の規模以上の不動産等賃貸や太陽光電気の販売、農業等は自営に該当しますが、所轄庁の長等の承認を得た場合には行うことができます。
不動産等賃貸について
【自営に該当する基準】
イ 独立家屋の賃貸の場合 ・・・ 賃貸件数 5棟以上
ロ アパートなどの賃貸の場合 ・・・ 賃貸件数10室以上
ハ 土地の賃貸の場合 ・・・ 契約件数10件以上
二 駐車場の賃貸の場合 ・・・ 駐車台数10台以上
ホ 賃貸料収入が年額500万円以上 等
【承認基準】
① 職員の官職と当該兼業との間に特別な利害関係の発生の恐れがないこと
② 兼業に係る業務を事業者に委ねることなどにより、職務遂行に支障が生じないことが明らかであること
③ 公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと
太陽光電気の販売について
【自営に該当する基準】
販売に係る太陽光発電設備の定格出力が10キロワット以上である場合
【承認基準】
不動産等賃貸の承認要件(上記①~③)と同様の要件が必要となります。
農業等について
【自営に該当する基準】
大規模に経営され客観的に営利を主目的とする企業と判断される場合(主として自家消費に充てることを目的とする小規模なものは該当しません。)
【承認基準】
不動産等賃貸の承認要件(上記①~③)に加え、④相続等により家業を継承したものであることという要件も必要となります。
【参考】義務違反防止ハンドブック(人事院)
【URL】http://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/handbook.pdf
さらに簡単に言うと、以下の規模の範囲内なら承認すら不要です。
- 農業なら、大規模経営ではない
- 太陽光発電なら、設備が10キロワット以下
- 不動産等賃貸なら、4棟以下、9室以下、年間賃料収入500万円未満
また、この規模を超える場合でも、上の「人事院規則の定めるところ」に該当すれば、申し出をすることにより、承認を得ることが可能です。
不動産等賃貸における承認基準を具体的に言うと、
① は、不動産が公務員としての取引先と関係ないこと
② は、管理は管理会社に委託すること
③ は具体化するのが難しい表現ですが、特に周囲へ「自分は不動産投資を行って利益を得ている」と触れ回ったりしない限り問題ないと考えれば良いでしょう。
地方公務員
次は地方公務員の場合です。
地方公務員の副業は、地方公務員法によって次のように規定されています。
地方公務員法
第38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
ここでいう「営利を目的とする私企業を営むこと」の基準は、各自治体によって独自に定められていますが、実際には国の基準とほぼ横並びの自治体が多いようです。
つまり、多くの自治体でも、
- 4棟以下
- 9室以下
- 年間賃貸料収入500万円未満
であれば特に申請をしなくても不動産投資が可能となります。
地方公務員ですから、一般の市立小中学校や県立高校の教員などもあてはまります。
アフィリエイトはどうなの?
農業や不動産賃貸などは、一定の基準以下で「副業」が可能だということが分かりました。
でも、世の中、農地や不動産などの資産を持っている方ばかりではありません。
一般的な給与所得者である公務員の方にとっては、時間を工夫すれば、一番手っ取り早くできる「副業」はアフィリエイトではないでしょうか。
ただ、世間では一般的に公務員のアフィリエイトは「副業」なので禁止されていると思われています。
はたして本当にそうなのでしょうか。
公務員の副業が原則として禁止される理由は、
- 信用失墜行為にあたる
- 職務専念義務違反となる
- 営利目的の行為である
ということですよね。
ひとつずつ見ていきましょう。
1.アフィリエイトは信用失墜行為なの?
国家公務員にも地方公務員にも信用失墜行為の禁止が規定されていて、違反すると懲罰の対象となります。
でも、公務員が単に趣味のブログなどを運営することは信用失墜行為とはなりません。
スポーツや旅行などさまざまなジャンルのブログがあり、その中には公務員の方が管理人の場合もあるでしょう。
趣味のブログの中で行うアフィリエイトは、いわゆる看板貸しのようなもの。
信用失墜行為には当たらないのです。
信用失墜行為となるのは、ブログなどを利用して、守秘義務に反するような内容を公表したり、または株取引の指南など営利のみを目的としたような内容をアップしたりする場合です。
2.アフィリエイトは職務専念義務違反なの?
国家公務員法第96条及び地方公務員法第30条では、公務員の服務の原則として、
と規定されています。
さらに国家公務員法第101条第1項前段及び地方公務員法第35条では、勤務時間中の職務専念義務について、
と明記されています。
この義務は勤務時間中は全力で働くことを明文化したもので、勤務時間外は職務に専念する義務はありません。
就業時間を終えれば、公務員の方も一般の社会人です。
つまり、勤務時間外であればアフィリエイトを行うことは職務専念義務違反にはなりません。
3.アフィリエイトは営利目的の行為なの?
繰り返しますが、国家公務員法には次のように定められています。
第103条 職員は、営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員等の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
第104条 内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可がない限り、報酬を得て兼業してはならない。
地方公務員法でもほぼ同じです。
第38条 職員は、任命権者の許可をうけなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
以上から、アフィリエイトが従事制限にあたるかどうかは、
- 私企業(営利企業)であるかどうか
- 報酬を得ているかどうか
が判断基準になります。
アフィリエイトは「私企業」なの?
まず、アフィリエイトが「私企業(営利企業)」にあたるかどうかです。
先にお示しした、「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」では、
第1項関係
- 「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」とは、商業、工業、金融業等利潤を得てこれを構成員に配分することを主目的とする企業体をいう。会社法(平成17年法律第86号)上の会社のほか、法律によって設立される法人等で、主として営利活動を営むものがこれに該当する。
- 「役員」とは、取締役、執行役、会計参与、監査役、業務を執行する社員、理事、監事、支配人、発起人及び清算人をいう。
- 「自ら営利企業を営むこと」(以下「自営」という。)とは、職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営する場合をいう。なお、名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合もこれに該当する。
と定められています。
アフィリエイトが法人ではなく、その役員として行うものではないので1と2は省略します。
問題は3の「職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営する場合」に該当するかどうかです。
自己の名義で行っていることは間違いありませんが、はたしてアフィリエイトが「経営する場合」に該当するのでしょうか。
デジタル大辞泉では「経営」について次のように定義しています。
事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること。また、そのための組織体。
つまり、アフィリエイトで利潤を得ることがブログ開設の目的なら該当するかもしれませんが、趣味のブログを発展させる中でアフィリエイトを始めたなら「経営」とは言えないのではないでしょうか。
アフィリエイトは「報酬」にあたるの?
次に重要なのは「報酬を得て」というところです。
国家公務員法にも地方公務員法にも「報酬」の定義は明文化されていません。
とすると、ここでの「報酬」とは、どのように考えるべきなのでしょうか。
地方公務員月報平成元年12月号(自治省公務員課編17頁)では、
「報酬」とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるものをいう。
「労務、労働の対価」とは、職員が一定の労働を提供することに対して双務契約に基づき支払われる反対給付のすべてをいい、金銭のみでなく、現物給付、利益の供与についても「報酬」の対象となる。
それが、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問わない。
ただし、謝金、実費弁償に当たるものは「報酬」に含まれない。
たとえば講演料、原稿料、布施、車代等である。「いかなる事業若しくは事務」とは、それが営利を目的とするものであると否とを問わず、すべての事業及び事務を含むものである。
報酬を得ないで非営利事業もしくは事務に従事することについては、地公法は規定していない。
と記されています。
このことから、国(総務省)における「報酬」の定義は、「労務・労働の対価」としての性質をもち、双務契約に基づいて支払われる反対給付であることが前提とされていることがわかります。
アフィリエイトの報酬は労働の対価なの?
アフィリエイトの報酬は一定の労働に対して必ず発生するものではなく、いくら時間をかけて作ったサイトであっても1円にもならないこともあります。
これでは、総務省の示す「労務・労働の対価」とは言えません。
アフィリエイトの報酬は双務契約に基づき支払われる反対給付なの?
双務契約とは、当事者双方が互いに対価的な意義を有する債務を負担する契約のことを言い、双方の債務が対価関係にあるため,その履行については同時履行の抗弁権 (民法第533条) が認められます。
同時履行の抗弁権とは、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるとする権利です。
アフィリエイターはASPに会員登録して、好きな広告を好きなように自分のブログやホームページに貼り付けているだけです。
どれだけ働いても良いですし、全く働かなくても問題ありません。
ましてやそのブログやホームページを見た人がクリックすることによって報酬が支払われる契約ですので、アフィリエイターとASPの間には同時履行の抗弁権は存在しません。
つまり、アフィリエイトの報酬が、法律上の「報酬」になるとは考えられません。
報酬とみなされない以上、国家公務員法第104条や地方公務員法第38条に規定される、公務員が受け取ってはいけない「報酬」と、アフィリエイトの「報酬」はまったく別のモノであり、アフィリエイトが「副業」に該当するとは判断できないのです。
メルマガはどうなの?
メルマガついても、単に情報発信だけなら趣味のブログと同じです。
ただメールの中に、商品の購入や有料サイトへの登録などを促すような文言やリンクなどが記載されていた場合は話がちょっと変わってきます。
この場合は、公務員だからということではなく、日本国民として、特定商取引法や特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)の適用を受ける可能性があります。
特定電子メール法では送信者の氏名を、特定商取引法では氏名、住所、電話番号を明記する義務が規定されていて、この場合、ハンドルネームや実体のない住所などによる表示は禁止とされています。
氏名や住所の表示がないまま、営利目的があるメルマガなどを発行すると法令違反となるケースがあり、罰則が適用されるだけではなく、公務員である場合は、法令順守の義務に違反し、信用失墜行為を犯すことになります。
匿名でサイトを運営されている方は、メルマガはやめておきましょう。
【参考】特定商取引法
消費者庁HP:特定商取引法ガイド~通信販売
http://www.no-trouble.go.jp/what/mailorder/
【参考】特定電子メール法
総務省HP:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/pdf/m_mail_pamphlet.pdf
ネットオークションはどうなの?
今までみてきたとおり、法人でなくても「私企業」とみなされるケースはありますが、(営利事業という)事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行するのでなければ問題ないでしょう。
次に「報酬」に当たるか否かですが、ネットオークションで得た収入を「労務・労働の対価」としてみなすにはムリがあると思います。
また、義務違反防止ハンドブック(人事院)には、
【照会例 6】
Q. インターネットやフリーマーケットでの商品販売を行ってもいいですか。
A. インターネットやフリーマーケットでの商品販売などは、店舗を設けたり、販売目的で大量に仕入れたり、定期的・継続的に行えば、商店(営利企業)の経営と同様と判断され、第103 条の自営兼業に該当し禁止されます。
と書かれていますので、営利を目的としたものではなく、あくまでも「自分が不要になったものなどを捨てるかわりに誰かに適価で譲る」範囲のものなら問題ないということになります。
金融取引
今までと同じように考えれば、株やFX等の金融取引は「私企業」であるとは言えず、また、いくら労務をかけても必ずその「対価」が得られるわけではありません。
つまり、金融取引も「副業」には当たらないのです。
一定の職以上についている国家公務員には、株取引の報告書や所得金額・贈与税の課税価格に関する報告書の提出が義務付けられていますが、逆に提出を求めるということは、公務員(この場合は国家公務員)が株取引を絶対的な禁止事項とはしていないということになります。
ただし、勤務時間中の金融取引はもちろん、信用失墜につながるような高額な取引を行ったり、取引で得た報酬が一定額を超えているにも関わらず申告しないなど、法令に反する行為は処罰の対象になります。
副業がバレたらどうなるの?
そもそもアフィリエイトが副業に該当しないなら、バレる、バレないの問題ではないのかもしれません。
アフィリエイトがネット上で匿名性を持って管理運営できる以上、本人が黙っていればおそらくバレることはないでしょう。
問題は、アフィリエイトそのものからバレるのではなく、一定額以上の収入が発生してしまったら結果的にバレてしまうということです。
公務員をはじめとする大部分の給与所得者は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するため、確定申告の必要はありません。
しかし、1か所から給与の支払を受けていて、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える場合は、給与所得者であっても原則として確定申告をしなければなりません。
【参考】国税庁HP タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
【URL】https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1900.htm
もし、20万円を超えているにもかかわらず申告しないのであれは、法令順守の義務や信用失墜行為に当たります。
申告後は、給与所得以外の収入が源泉徴収票に記載されることになりますので、いずれかの時点で人事管理担当部門から説明を求められることになるでしょう。
このとき、正直にその理由を「アフィリエイト」と言えるかどうかにかかっています。
また、その時点で、いつからどのように運営して、いくら稼いでいたのかなどを細かく聞かれることとなります。
アフィリエイトのように、副業に当たるか否かについて判断の分かれる事柄については、最終的には任命権者(大臣や知事、市長など)の判断に委ねられることになります。
おそらく、速やかにアフィリエイト・サイトを閉鎖するように促されることになると思います。
それでも従わなければ、場合によっては懲戒処分などの対象になるかもしれません。
処分がなされた場合には、サイトを閉鎖して公務を継続するか、退職するか、または任命権者(大臣や知事、市長など)を相手に訴えを起こすかしかありません。
まとめ
公務員だからという理由で「副業」ができないわけではありませんし、決められた範囲で承認が得られれば「副業」は可能です。
また、収入が発生することでも、すべてが「副業」にあたるわけではないのです。
ただし、明らかに営利を主目的としたものや、給与を大きく上回るような高額な収入を得ている場合には、一定の判断が下されることもあると思います。
あくまでも「副業」なのですから。
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