公務員の病気休暇は何日とれるの?給料は?その他の休暇は?
2020/02/24

以前、大阪市の職員が過去5年間で毎年50~100日の「病気休暇」を取得していたという事件が報道され、話題になりましたよね。
公務員の病気休暇ってどうなっているのでしょうか。
調べてみました。
公務員の病気休暇は何日とれるの?
そもそも「病気休暇」とは?
病気休暇とは、体調不良やケガなど、業務とは関係ない健康上の理由で仕事を休む場合に利用できる休暇制度です。
国家公務員は人事院規則、地方公務員は各地方の条例、民間企業はそれぞれの就業規則によって定められています。
公務員は一般的に最大90日程度まで病気休暇が認められていて、給与も満額支給ですが、民間企業はその期間と給与の有無がそれぞれの会社で異なっています。
公務員の「病気休暇」は?
では、公務員の病気休暇は何日取得できるのでしょうか。
ワタシの住むさいたま市では、次のような条例が定められています。
さいたま市職員の勤務時間、休日及び休暇に関する条例(抜粋)
(病気休暇)
第14条 病気休暇は、職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合における休暇とする。
2 病気休暇の期間は、規則で定める日を除き、連続して90日(規則の規定に基づき90日となる場合を含む。)を超えることはできない。ただし、公務上又は通勤(地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第2条第2項及び第3項に規定する通勤をいう。)により負傷し、又は疾病にかかった場合その他の規則で定める場合における休暇の期間は、規則で定める期間とする。
う~ん、法令っていつも難しいのですが、簡単に言うと次のとおりになると思います。
1 病休は負傷や疾病の療養のために勤務できない場合に取得できる。
2 病休は90日を限度として取得できるが、公務中に負傷等をした場合(公務災害)の期間は規則で決める。
で、規則です。
さいたま市職員の勤務時間、休日及び休暇に関する条例施行規則(抜粋)
(病気休暇)
第20条 条例第14条第2項の規則で定める日は、次に掲げる日(以下この条において「除外日」という)とする。
2 (略)
3 条例第14条第2項ただし書の規則で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項ただし書の規則で定める期間は、当該各号に定める期間とする。ただし、第1号及び第3号の規定は、第2号に規定する職員には適用しない。
一 公務上又は通勤(地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第2条第2項及び第3項に規定する通勤をい)により負傷し、又は疾病にかかった場合 その療養に必要な期間
つまり、公務災害の場合は、治癒するまで病休を取得できることになります。
ここで、冒頭の大阪市の事件を見てみます。
キッカケは偽装結婚の容疑だったようですが、大阪市の男性職員は。2008年から2012年10月に逮捕されるまでの約5年間で、計384日の「病気休暇」を取得していました。
大阪市職員の休暇制度では、病気休暇取得の際は医師の診断書の提出が義務付けられるため、通常は手術や病状が重いケースで適用され、最長で90日までと定められています。
男性職員は、医師の診断書は提出していて制度上は問題ありませんでした。
男性職員は制度を濫用して短期の病欠を繰り返し、、2週間休んで、その後で再度診断書を出して延長、といった具合で、病状もさまざまだったようです。
休暇期間は2010年に101日、2011年に98日と90日をやや上回っていたようです。
規定では、過去1年間で3回以上、30日以上取得した場合は産業医による面談を実施し、制度の乱用とみなされれば人事担当部署が改善措置を図ることになっていたようですが、男性職員の勤務先でも本人に勤怠指導をしており、注意したうえ、早期に職務に復帰するよう促していたとのことです。
でも、その「警告」を無視するかのように新たな診断書を携えて、病欠を繰り返したというから、筋金入りですね。
つまり、限度は90日とは言いながら、事実上はそれを超えても病休が取得できるものだったのです。
これらのことを受けて、地方自治体が参考としている人事院規則が改正され、病気休暇制度の見直しが行われたため、ココまで露骨な病気休暇は取得が難しくなっています。
しかし、原則としては、通常の負傷や疾病は90日、公務災害は期限なしで取得できることは変わりなく、ほぼすべての自治体でもこの考え方がとられているのです。
病気休暇のときの給料は?
では、気になる病気休暇中の給与はどうなっているのでしょうか。
同じく、さいたま市の条例で見てみます。
さいたま市職員の給与に関する条例(抜粋)
(休職者の給与)
第33条 職員が公務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は通勤(地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第2条第2項及び第3項に規定する通勤をいう。)により負傷し、若しくは疾病にかかり、法第28条第2項第1号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間中、これに給与の全額を支給する。
2 職員が結核性疾患にかかり、法第28条第2項第1号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間が満2年に達するまでは、これに給料、扶養手当、地域手当、住居手当及び期末手当のそれぞれ100分の80を支給することができる。
3 職員が前2項以外の心身の故障により法第28条第2項第1号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間が満1年に達するまでは、これに給料、扶養手当、地域手当、住居手当及び期末手当のそれぞれ100分の80を支給することができる。
4 職員が法第28条第2項第2号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間中、これに給料、扶養手当、地域手当及び住居手当のそれぞれ100分の60以内を支給することができる。
ここで言う「法」とは地方公務員法のことですので、抜粋をお示しします。
地方公務員法(抜粋)
(降任、免職、休職等)
第28条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 (略)
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三~四 (略)
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
3 (略)
4 職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。
つまり、公務中の災害等で病気休暇を取得せざるを得なくなった場合は、無期限で取得でき、その間満額支給となり、その他の病気休暇の場合は最大90日まで取得できて、その間満額支給となります。
90日経過後は休職扱いとなりますが、結核以外の病気等の場合は1年間は8割、刑事訴追中は6割が支給されるのです。
ちなみに、さいたま市では、病気休職になりその後3年間復職できない場合は失職となり、公務員としての身分を失います。
民間企業ではどうなっているの?
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、民間企業で病気休暇制度がある会社の割合は、25.7%にとどまっています。
そのうち、給与を全額支給する会社は45.5%、一部支給が20.7%、無給が33.8%です。
すなわち、病気で休んでも給料を満額支給してくれる会社というのは、
0.257×0.455≒0.116
となり、民間企業全体の約1割しかないということです。
こう考えると最大90日間も満額支給してくれる公務員というのは、かなり恵まれていると言えますね。
その他の休暇はどうなっているの?
今まで病気休暇をみてきましたが、その他の休暇制度はどうなっているのでしょうか。
さいたま市ではこうなっています。
休暇名 | 日数・時間 | 備考 |
年次有給休暇 | 暦年20日 (最大40日) | 取得単位: 1日、1時間、15分 |
生理休暇 | 3日の範囲内でその都度 | |
結婚休暇 | 連続する8日(週休日を除く) | 結婚の1か月以内 取得単位 :1日 |
通院休暇 | 出産予定日6週間前から産後8週間 | 加算期間1週間 |
出産補助休暇 | 5日 | 出産の日後3週間まで |
育児参加休暇 | 5日 | 取得単位 :1日、1時間 |
保育時間 (育児休暇) | 1日2回、午前午後各30分 (1回60分も可) | 取得単位:30分 |
看護休暇 | 5日 (5人以上10日) | 中学校就学前の子の疾病の世話等 取得単位:1日、1時間、15分 |
短期介護休暇 | 5日 (要介護者2人以上は10日) | 配偶者等が負傷等により2週間以上に渡り日常生活に支障がある場合 取得単位:1日、1時間 |
介護休暇 | 要介護者1人に通算6か月間(3分割可) | 配偶者等が負傷等により 2週間以上に渡り日常生活に支障がある場合 取得単位:1日、1時間 ※無給 |
介護時間 | 要介護者1人に対して3年間の範囲内で1日2時間まで | 取得単位:30分 ※無給 |
忌引休暇 | 配偶者:10日、子5日 血族の父母:7日 等 | (遠隔地加算) 片道4時間~8時間:1日 片道8時間以上:2日 |
法要休暇 | 配偶者、父母、子の法事を行う場合:1日 | (遠隔地加算) 片道4時間~8時間:1日 片道8時間以上:2日 |
病気休暇 | 異なる病気でも通算して90日まで | 医師の診断書 インフルエンザは回数の制限なし 取得単位:1日、1時間、1分 |
通勤緩和休暇 | 1日に1時間の範囲 (始業時又は終業時) | 取得単位:1時間、1分 |
夏季休暇 | 7月から9月の期間:5日 | 取得単位:1日、0.5日 |
感染予防休暇 | その都度必要とされる期間 | |
天災及び交通機関の事故に係る休暇 | その都度必要とされる期間 | |
災害休暇 | 職員の現住居の減失又は破壊の場合のみ対象 | |
ドナー休暇 | 配偶者、父母、子及び兄弟姉妹への骨髄等の提供は除外 | |
官公署等への出頭休暇 | 職務に関しなくても可 | |
ボランティア休暇 | 5日 |
などなど…。
あ~、もうイイです…。
ちなみに、公務員の休暇と職務専念義務免除との違いについてはコチラをどうぞ。
公務員の職務専念義務免除~休暇との違いは?教員の職務専念義務免除も
まとめ
いかがでしたか。
少なくとも90日間の病気休暇は給与は満額支給。
そんな恵まれた制度を濫用してはイケませんよね。
でも、ほとんどの公務員の方はまじめに仕事をされています。
頑張りましょう!
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